ケーススタディ021:マイクロ資料とマイクロリーダー

 

映画に図書館が登場するとき、意外とよく登場するコレクションがマイクロ資料(マイクロフィルム、マイクロチップ)です。

実際の図書館での利用率は抜群に低い資料なので不思議ですが、過去の古い新聞などが保存されているので、ミステリー映画などで利用されるのは納得です。

 

ミステリー映画『ミザリー』では、田舎の保安官が怪しい人物について、製本された新聞記事で解明する場面が描かれますが、製本された新聞記事よりもさらに古い記事がマイクロフィルムなどのマイクロ資料で保存されています。

新聞に限らず古い文献などもありますが、映画に登場するときは、その利用の目的は古い新聞記事であることが多いです。

 

映画にみる図書館のコレクション「マイクロ資料」

 

マイクロ資料は、図書館のコレクションを大きく分けた非印刷資料にあたります。

 

資料や文献を縮小撮影したフィルムで、フィルムをロール状に巻いたマイクロフィルムとプレート上のマイクロフィッシュなどがあります。

 

 

では、映画に「マイクロ資料」が登場する場面をみてみましょう。

 

映画『ゆりかごを揺らす手』にみる図書館のケーススタディ

 

映画『ゆりかごを揺らす手』のでは、主人公の友人が、図書館のマイクロフィルムに残された新聞記事を使って怪しい人物の目的を把握するという場面が描かれます。

 

 

ある幸せな一家の元に、ペイトン・フランダースと名乗る若く美しいベビーシッターがやってきます。

 

何もかも完璧に振る舞うベビーシッターですが、彼女が来てからというもの周囲で少しずつ異変が起こりはじめます。

 

 

そんな彼女に最初に懐疑の目を向けたのは、ペイトンを雇う夫婦の友人マーリーン(ジュリアン・ムーア)です。

 

次第にマーリーンは彼女への疑いを強め、公共図書館に行きます。

 

慣れた様子でマイクロを操作する若き日のジュリアン・ムーアに注目©Buena Vista Pictures Distribution, Inc. All rights reserved

 

そして、マイクロフィルムで古い記事を閲覧し、ペイトンがその家庭に接触した動機となる証拠を突き止めます。

 

映画が始まって約1時間20分(映画の残り時間30分)に図書館が登場し、図書館シーンは1分もありませんが、そこから一気に物語は終結に向かいます。

 

 

映画『旅立ちの時』にみる図書館のケーススタディ

 

映画『旅立ちの時』では、ワケあって逃亡生活を送る一家の父親が、新天地で名乗る家族の名前を古い新聞の訃報記事から拝借するため、マイクロフィルムを利用するという場面が描かれます。

 

 

主人公のダニー(リヴァー・フェニックス)は、60年代の反戦運動のテロリストとしてFBIに指名手配されている両親と共に名前を変えながら各地を転々と逃亡生活を送っています。

 

取り繕って生活するために様々な情報が必要なのでしょう、ダニーの父・アーサーは、かなり図書館を使いこなしている印象で、たびたび彼の口から「図書館」というワードがでてきます。

 

ふたたび逃亡の日がやってきて、ニュージャージーの小さな町で新しい生活を送ることになります。

引っ越して早々、アーサーは古くて小さい地方の公共図書館を訪れます。

新天地で名乗る新しい名前を入手するため、古い死亡記事を探しているアーサーは、図書館員にすすめられてマイクロフィルムを使います。

 

>>ケーススタディ022:地方紙のマイクロフィルムで死亡者の名前を拝借

 

 

 

©Warner Bros. Entertainment Inc.

 

 

かなり古い型のマイクロリーダーです。

文字も白抜きで、現代では見慣れないものですね。

 

 

映画『スポットライト 世紀のスクープ』にみる図書館のケーススタディ

 

映画『スポットライト 世紀のスクープ』には、新聞社の専門図書館で司書が総出で資料をかき集める見ごたえある図書館場面がありますが、その中でその中にマイクロ資料も登場します。

 

日刊紙「ボストン・グローブ」の少数精鋭取材チーム「スポットライト」は、新らしく赴任してきた局長に、ゲーガン神父の子どもへの性的虐待事件を調査して記事にするよう指揮されます。

 

 

チームのデータベーススペシャリストであるマットは急いで図書館に向かい、必要な資料を司書に伝え、すべてを用意するよう依頼します。

 

司書は総出であらゆる資料をかき集めてファイリングしますが、その中にマイクロ資料が含まれていました。

 

1.司書長のリサが、該当のマイクロフィルム(リール)を探しています。

 

後ろにある山積みになった新聞は、図書館のバックヤードを表現するためのアイテムでしょうか©2015 SPOTLIGHT FILM, LLC

 

2.恒例の図書館員がマイクロリーダーを操作しながら該当記事を探しています。

©2015 SPOTLIGHT FILM, LLC

 

こちらも、『旅立ちの時』と同じで黒の背景に白抜き文字ですね。

 

マイクロ資料が登場するその他の映画

 

誘惑者(1989/日本)

 

アイ・ラブ・トラブル(1994/アメリカ)

 

ストーリービル秘められた街(1992/アメリカ)

 

ガラスの塔(1993/アメリカ)

 

幸せの向う側(1991/アメリカ)

 

沈黙の段壁(1997/アメリカ)

 

映画にみる図書館用語「マイクロ資料」「マイクロリーダー」

 

マイクロ資料(microform)

数量の多い資料や文献、本や雑誌のページ、新聞、地図や設計図などの平面資料を写真技術により縮小した資料のことです。

 

図書館では総じて「マイクロフィルム」と呼ぶことが多いですが、形態はマイクロフィルムのほかに「マイクロフィッシュ」、「マイクロオペーク」があります。

 

縮写して保存されているため内容を肉眼で読み取ることはできません。

情報を取り出すためには、マイクロ資料リーダーと呼ばれる画像拡大装置が必要となります。

 

マイクロ資料は、スペースの節約に加え優れたコスト効果と利用効果においても評価され、保存メディアとしても評価が定着し、情報の生産、流通、保存に重要な位置を占めてきていましたが、コンピュータの画像処理技術と蓄積メディアの発展に伴い、検索にも優れた画像データベースシステムへと移行しつつあります。

 

マイクロリーダー(microform reader)

 

マイクロフィルムやマイクロフィッシュといったマイクロ資料を拡大して肉眼で読むための装置です。

縮小されたマイクロ資料は肉眼で読み取ることはできないので、マイクロ資料の利用にはマイクロ資料リーダーが必要になります。

光をマイクロ資料にあて、レンズで拡大してスクリーンに表示して情報を読み取ります。

プリンターが備え付けられたリーダーもあり、その場合、マイクロ資料を拡大したり、引き伸ばしたりしてプリントアウトし読むことができます。

出典:日本図書館情報学会「図書館情報学用語辞典」

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