図書館は、わたしたちが生まれるずっと前から存在し、誰でも利用できる生活に根付いたものですが、すべての人にとってその存在が当たり前で身近なものであるというわけではないようです。
映画に図書館が登場するとき、しばしば、本が好きで図書館をよく知っている人によって、そうではない人が図書館の存在に気付くという描写があります。
映画にみる〈利用者から利用者への図書館ガイド〉
おもに観光名所にある博物館的な役割を持つ図書館には、司書や学芸員などによって観光客に対する「図書館ガイド」やツアーがあります。
また、所属学生に対して情報リテラシー教育を行うことが期待されている大学図書館にも、新入生に対する図書館の使い方を教示するガイダンスが実施されます。
しかし、図書館をよく知っている人が、そうではない人にその場所と使い方を教えるということも、日常的にあるのではないかと思います。
たとえば、映画『マチルダ』では、親によって本などの教育的なものを排除させられながらも好奇心を抑えられない少女が、自分で図書館を見つけるという描写があります、きちんと機能した家庭であれば、親が子どもに公共図書館の場所と使い方を教えるというのは、家庭教育として一般的に行われているのではないかと思います。
図書館があることを知るだけで、子どもはそこにある財産を自由に手にし、学ぶことができます。
司書や図書館情報学の教員のような専門家からではなく、利用者から利用者への図書館案内が描かれる映画があります。
『ティファニーで朝食を』にみる図書館のケーススタディ
BGMにムーンリバーが流れるオープニングの場面。
オードリー・ヘップバーン演じるホリーは、ティファニーニュ-ヨーク本店の前でタクシーを降り、ショーウィンドウの前まで来ると宝石を眺めながらデニッシュを頬張り、コーヒーを飲みます。
ティファニーに強いあこがれを抱く高級娼婦として働くホリーの、仕事帰りの日課です。
実は、ここからわずか4マイル(約6キロ)の位置にニューヨーク公共図書館があるのですが、ホリーはその存在を知りません。
ある日、ホリーが暮らすアパートの上階に新進作家のポールが引っ越してきて、ふたりは次第に仲良くなっていきます。
ホリーに惹かれていくポールは、彼女がお金持ちをターゲットに結婚相手を探していることを責めるのですが、ポール自身も作家として成功を夢見てはいるけど食べていけるほどではなくお金持ちの女性に養ってもらっており、そのことをホリーに指摘され、関係はぎくしゃくしていきます。
その後、仲直りをするためにお互いにニューヨークでやったことがないことをやろうと計画したふたりは、まず、ホリーがポールをお気に入りのティファニーに連れていき、次にポールがホリーをニューヨーク公共図書館に連れていきます。
ティファニーを出たホリーとポールが、ウィンドウショッピングをしながら歩いている場面では、ニューヨーク公共図書館の正面、図書館のシンボルのライオン像も映ります。
そして、ニューヨーク公共図書館の中へ…
ホリー:What is this place, anyway?(ここはどういう場所?)
ポール:You said you wanted to sit down, this is the public library … You never been here?(君が座りたいといったからね。ここはニューヨーク公共図書館。来たことない?)
ホリー:No. That makes two for me … I don’t see any books.(図書館なんてね。でも本がないわ。)
ポール:They’re in there. See?(ここだよ。見えるかい?)
ポールはホリーに閲覧室をみせます。
ここは、現在のニューヨーク公共図書館の3階にある美術と建築の書物を集めた閲覧室として使われているエリアだと思われますが、定かではありません。
次は、目録カードコーナーへ
ポール:Each one of these little drawers is stuffed with little cards, and each little card is a book or an author.(ここにカードがつまっている。署名別か著者名別のカードだ。)
ホリー:I think that’s fascinating!(面白そうね)
ポール:[著者名”V”の引き出しを引きながら]V-A-R-J-A-K.[ポールのファミリーネームを綴りをいう。]
ホリー:Really?(ほんと?)
ホリー:Look! Isn’t it marvelous? There you are, right in the public library.”Varjak, Paul. Nine lives” … Then a lot of numbers. Do they really have the book itself, live?(まぁすてきね。あったわ あなたの本が。ポール・バージャック「9つの命」)
ポール:Sure, follow me …
ポールは、自分の作品を例に目録カードの引き方をホリーに伝授しました。
ポールが、目録カードを引き出しごと持って「File call slipt here」の案内があるカウンターに持っていきます。
その後、図書館で何が起こっているのかというのは次のケーススタディで。
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