書庫の本の”出納”

 

映画『ティファニーで朝食を』では、駆け出しの作家・ポール(ジョージ・ペパード)が、ホリー(オードリー・ヘップバーン)をニューヨーク公共図書館に連れて行き、目録カードで自分の本を紹介する場面が描かれます。

 

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貸出方法は、ニューアーク式かブラウン式かはわかりませんが、いずれにしてもデジタル化される前の、目録カードで本の蔵書を管理していた時代の貴重な図書館映像です。

 

 

自分の著書を例に目録カードの引き方を伝授したポールは、目録カードを引き出しごと持って「File call slipt here」と書かれたカウンターに持っていきます。

そのカウンターにはアフリカ系アメリカ人の男性司書がいます。

このあと場面は、別の場所に移り、ベルが鳴り、彼らの出納番号「57」の掲示が光り、先ほどとは別の司書から本を受け取ります。

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『ティファニーで朝食を』でのこの一連の流れの間、図書館の利用者からはみえないところでなにが行われているかわかりますか?

 

『ティファニーで朝食を』にみる図書館のケーススタディ

 

この場面からは、ポールの著作は書庫(閉架式書庫)に収められていて、利用者が自分でその本を直接手にすることはできないということがわかります。

そのため、目録カードを担当カウンターに持って行き、職員の手によって図書を出してもらうシステムが採用されています。

 

現在でも、公共図書館では古い書籍などは書庫に入っていることが多く、その場合は書誌情報を持ってカウンターに行き、出納してもらうことがあります。(どの本が書庫に配架になるかの基準は図書館によって異なる)

書誌情報は、現在はほとんどがOPACというシステムを使っていて、[配架場所]に[書庫]などの情報が書かれています。

閉架がメインの学術図書館などでは、カウンター業務の一環としてではなく、この映画のアフリカ系の男性司書のように「本の出納係」がいる図書館もあります。

 

 

さて、ここでポールから目録を受け取った司書は、このあとどういう作業を経て利用者に提供するのか…という流れを描いたのが『オフ・ビート』です。

 

 

『オフ・ビート』にみる図書館のケーススタディ

 

主人公のジョー(ジャッジ・ラインホールド)は、『ティファニーで朝食を』の舞台であるニューヨーク公共図書館に勤務しています。

持ち場はもっぱら書庫のようで、空気孔から送られてくる書誌情報を手にローラースケートを履いて走り回り、次々と書架から本を取り出し、送っています。

 

この場面はなかなか疑問点が多くて、まず、ニューヨーク公共図書館のような規模の図書館の書庫があんなに小さいはずがない上、その担当もひとりしかいないはずがない。もしかしたら、いろいろなセクションに分かれていて、各所に一人ずつ配置されているのかもしれませんが、おそらくそこまで深く設定を考えられていないのではないかと思います。

次々に送られてくる請求に対し、ひとりで対処するのは大変だからローラースケートを履いているのだろうし、本の扱いも雑でちょっとびっくりします。

 

しかしそれでも、まったくのフィクションで浮世離れしているともいえず、こういうセクションは確実に多くの図書館に存在するので、図書館の舞台裏の、利用者にはみえないこのような部分を描いた映像はかなり貴重です。

『オフ・ビート』はフランシス・フォード・コッポラ監督の『大人になれば…(You’re a Big Boy Now) 』のリメイクで、こちらでもそういたった場面が描かれていますが、それ以外にこのような場面が描かれるのはドラマやアニメを含めても見当たりません。

それに、現在、出版含むECサイトの大手であるAmazonの工場内では、ローラースケートどころか車やカートで走り回って本(や物品)を回収している様子も見られることから、ジョーの働き方は実は時代の先取りともいえなくもない気がします。

 

書庫内でジョーが取り出した本は、特殊なカートなどに乗せて、担当カウンターに送るようになっています。

その後、利用者の手に届くまでの様子は、また『ティファニーで朝食を』に描かれています。

 

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