2015年8月、鎌倉市の図書館がツイッターで
「もうすぐ二学期。学校が始まるのが死ぬほどつらい子は、学校を休んで図書館へいらっしゃい。マンガもライトノベルもあるよ。一日いても誰も何も言わないよ。9月から学校へいくくらいなら死んじゃおうと思ったら、逃げ場所に図書館も思い出してね。」(原文ママ)
と呟いて話題になりました。
普通、学校にいるはずの時間に子どもが公共図書館いたら気になる光景ではありますが、何も言わないのは確かです。
でも、無関心というわけではありません。
映画『マチルダ』にみる公共図書館のケーススタディ
映画『マチルダ』では、わずか4歳の少女マチルダがひとりで図書館にやってくる場面が描かれます。
司書のミセス・フェルプスは驚きながらもそれを表に出さず、子ども扱いすることもなく、必要なことをアドバイスし、手助けをします。
ここでも最初に話しかけたのは、やはり、図書館の利用者であるマチルダの方でした。
マチルダ:子どもの本はどこですか?
ミセス・フェルプス(図書館員):そこの部屋よ。絵本を選んでほしい?
マチルダ:ご心配なく。ひとりで大丈夫です。
マチルダと、図書館の受付カウンターに座るミセス・フェルプスの最初の会話です。
毎日図書館に通ってくるマチルダに、「自分の図書カードを作れば本を家に持って帰ることができる。毎日図書館に通う必要はなくなるし、何冊でも借りることができるよ。」と教えます。
ロアルド・ダールの原作『マチルダは小さな大天才』では、ミセス・フェルプスがマチルダを気にかけ、両親のことを訪ねてみる場面があります。
図書館に通う道中で事故にでも遭遇したら、と心配したりもしますが、結局、口出ししないことに決めます。
図書館はやはり、そういう場所です。
映画『スポットライト 世紀のスクープ』にみる専門図書館のケーススタディ
映画『スポットライト 世紀のスクープ』には、新聞社の専門図書館が出てきます。
新局長を迎えたマサチューセッツ州ボストンの日刊紙「ボストン・グローブ」の少数精鋭取材チーム”スポットライト”は、ゲーガン神父の子供への性的虐待事件を調査して記事にするよう指揮されます。
チームのデータベース調査スペシャリストであるマットは、最初から図書館に行き、メモを渡しながら司書に情報を集めるよう依頼します。
マット:Hey Lisa. Could you pull all the relevant clips on that for me? (こんにちは、リサ。これに関連する過去記事のコピーをまとめて私のところまで持って来てくれないか。)
リサ(司書):Yeah. [メモをみて] Is this for Spotlight?(スポットライト用?)
マット:Just drop them off when they’re ready? Thanks.(全部用意出来たら下におろすだけ。ありがとう。)
この場面、日本語字幕では、リサのセリフは「これ全部?」、その後のマットのセリフは「出来たら下まで送って」になっていますが、直訳すると、上記のように少しぶっきらぼうな会話になっています。
ここでは、「質問は受け付けない」というマットの確固とした意図が伝わります。
その後、チームは調査対象を広げる必要性が求められますが、その時もマットが図書館を利用します。
彼は最初、ボストン・グローブのコラムに司祭の虐待事件を取り上げたことがあるアイリーン(モーリーン・キーラー)のところへ行き、司祭が所属した教区の調べ方を尋ねますが、聞きたい情報だけをうまく聞くことができません。
マット:アイリーン。神父が所属した教区はどこで調べたらいい?
アイリーン:ゲーガンの記事なら記録室にあるでしょ
マット:記事で扱わなかった神父は?
アイリーン:別の神父が?
近くにいた別の社員:誰が?
マット:どこだい?
アイリーン:教えてくれないの?
マット:じゃ 会議があるから。またな。
「スポットライト」チームは極秘で調査をすすめる部署であるうえ、カトリック信者の多いボストンで様々な障害や妨害にあってきたため、社内でさえ情報が漏れないよう慎重に行動しています。
マットは、足早に立ち去り、次の場面では図書室にいます。
リサ(司書):The Archdiocese puts out an annual directory. Every priest and parish.(大司教区は毎年、すべての司祭と教区が書かれている名鑑を出しています。)
マット:Oh, that’s great. Do these go back any further than ’98?(それは素晴らしい。98年より前の物は?)
リサ(司書):Oh yeah, going back to the ’80s in the mez. Beyond that, you gotta go to the BPL. [Boston Public Library].(80年代のものはメズ*にあって、それ以前のものはBPL(ボストン公立図書館)に行かなければなりません。)
マット:The mez, huh? Thanks, Lisa.(メズ*か。ありがとう、リサ。)
リサ(司書): You bet.(どういたしまして。)
*メズ=メザニンの略で、「中二階」を示す。
司書は、聞かれたことにだけ答え、詮索はしません。
次の場面では、マットは教えられた通り中二階の図書室に行き、そこへチームのマイクとウォルターも合流します。
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