ケーススタディ023:個人情報を喋りすぎた結果、陰謀に加担してしまった司書

 

映画『大統領の陰謀』には、個人情報をペラペラ喋りすぎたばかりに、陰謀にまで加担する羽目になった女性司書(姿なし)が登場します。

 

 

 

アメリカ大統領選を間近に控えた1972年6月17日、ワシントンD.C.のウォーターゲートオフィスビル内の、当時野党だった民主党全国委員会本部に5人組の男が侵入、不穏な動きに気が付いた警備員の通報で男たちは全員、不法侵入罪で現行犯逮捕されます。

 

ワシントン・ポスト紙で法廷取材を命じられた新米記者のウッドワード(ロバート・レッドフォード)は、法廷取材にとどまらず、より踏み込んだ取材が必要だと感じ、ベテラン記者のバーンスタイン(ダスティン・ホフマン)と共に取材に取り組むことになります。

 

2人は官邸図書室や国会図書館から関係人物に関する資料を得ようとしますが、それらの機関は事件への関与を否定するばかりか火消しに奔走し、取材は困難を極めます。

 

『大統領の陰謀』にみる図書館のケーススタディ

 

記者のバーンスタインは、早々に官邸図書館(ホワイトハウス・ライブラリー)に電話で問い合わせます。

 

バーンスタイン:ハワード・ハントに、ロバート・ケネディ上院議員の資料を貸し出しましたか?
電話に応対した司書:YES.(即答)
そういえば、わたしがそんなことをした覚えがあります。あらゆる資料を。

すぐ調べます。



先ほどと同じ司書:勘違いでした。ハント氏への貸出表はありません。
誰かに貸したけど、それはハント氏ではないし、ハント氏には貸し出したことはありません。
名前も存じません。

 

一方的に電話を切られる。

 

バーンスタインは、経緯をウッドワードに伝え、ウッドワードがホワイトハウスの広報に問い合わせますが、やはり否定されます。
そればかりか、ワシントンポストからの問い合わせもなかったと言われます。

 

しかしこの場面、実際に図書館での勤務経験がある人や図書館情報学を学んだ人なら、もうひとつの可能性も考えたのではないでしょうか。

個人情報をペラペラ喋る司書が注意を受けて訂正した可能性です。

 

①ワシントン・ポストの記者から電話を受けた司書は、咄嗟のことに知っている情報を話しますが、
②それを聞いていた上司が電話を保留にするように指示し、
③保留中に「個人情報なので公表してはいけない。」と注意する。
④電話口に戻った司書は、前言撤回をする…

という可能性です。

 

その後のやり取りから陰謀であることは濃厚ですが、いずれにしても公開できない情報であるのは確かですよね。

「個人情報なのでお答えできません」の一言で陰謀に加担することもなかったのに、ペラペラ喋りすぎたために、個人情報を公開した上、陰謀にまで加担してしまった残念なケースです。

 

官邸図書室が何かに干渉されていることを理解したウッドワードとバーンスタインは、このあと国会図書館に出向き、ホワイトハウスへの貸出記録の開示を求めます。

 

>>ケーススタディ025:個人情報保護についての運用を共有できていない図書館

 

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