ケーススタディ049:未来の図書館の姿③ 司書と図書館員 

 

1975年に西暦2018年の近未来を描いたSF映画『ローラーボール』には、本がすべてデータ化され、「情報」だけが残された図書館が登場します。

 

 

図書館の場面は2回あり、それぞれが別々の場所なので、2つの異なる図書館が登場することになります。

 

最初の図書館シーンは、約2時間ある映画の35分後に登場し、約1分半の短いシーン。

>>ケーススタディ047:未来の図書館の姿① 図書館は情報サービスの一部となります

 

2回目は、映画の1時間半後に登場、ジョナサンは、分館の受付係が言及したジュネーブにある本館に行きます。

先ほどの分館よりも長く、6分半続きます。

>>ケーススタディ048:未来の図書館の姿② 情報の媒体はメモリープールになります

 

この2つの図書館場面では、それぞれに司書・図書館員が登場しますが、彼らの立場も計画に表されています。

 

「娯楽センター」 図書館の女の子

 

映画がはじまって35分に登場したのは、ジョナサンがチームメイトのムーンパイ(ジョン・ベック)と一緒に訪れた「娯楽センター」と呼ばれる場所です。

 

近未来的なモールのような場所で、ジョナサンは「Library」のプレートがぶら下がったカウンターに座るひとりの女性と会話をします。

 

ナンシー・ブレイアー演じるこの女性は、エンディングのキャストで「Girl in Library(図書館の女の子)」とクレジットされていることから、一般的な図書館でいう閲覧デスク、レファレンスなどの受付カウンターにいるスタッフだと分析できます。

 

たった1分半の短いシーンの中で、彼女の立場を示すこのようなセリフがあります。

 

図書館の女の子:You could go to the computer center where the real librarians transcribe the books, but we have all the edited versions in our catalog, anything I think you’d want.(経緯を知っている本物の図書館員がいるコンピューターセンターに行くこともできますよ。)

 

ジョナサン: Well, let’s see then. This is not a library, and you’re really not a librarian.(では、それを見てみましょう。ここは図書館ではなく、あなたも実際には図書館員ではないということですね。)

 

図書館の女の子:I’m only a clerk, that’s right. I’m sorry about it, really.(わたしは単なる受付です。確かに。申し訳ございません。)

 

この場面は、ジョナサンにとっては非常に不愉快な場面だと想像できます。

情報を求めて「本」を予約し、その本を利用するために来るように言われた場所で「絶版になったからここにはない」と言われるのです。

 

予約した本の受け取り場所でそれを受け取ることが出来ないことも、予約後に絶版になるようなことも、図書館ではありえません。

 

この図書館員は、自分の立場を示すことで責任から逃れることが出来ましたが、図書館の利用者に対して許しがたい仕打ちですよね。

 

この図書館の女の子は常に満面の笑みを見せていますが、それは、空虚な心のないロボットのような不自然な表情です。

 

 

ジョナサンは娯楽センターにいる図書館の女の子に、「本物の司書がいるコンピューターセンター」を紹介されます。

 

彼女によって「最大の場所」といわれるそこでは、いったいどのような図書館員がどんな仕事をしているのでしょうか。

>>ケーススタディ048:未来の図書館の姿② 情報の媒体はメモリープールになります

 

世界最大の図書館にいる本物の司書

 

心の底から必要な情報を求めているジョナサンは、ジュネーブの図書館で何かを見つけることができると期待しています。

 

そこで出会った司書は、最初、ジョナサンに対して憧れを表現しますが、落ち着かないような疲れきったような態度をみせはじめ、その理由は早々に明らかにされます。

 

「13世紀の情報をまるごと消しちゃった」しかもそれを「大したことじゃない」と、手に負えないひどいミスをカジュアルに言及した司書に対して、ジョナサンも不信感を抱きます。

 

 

 

 

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