ケーススタディ046:最も簡単に図書館情報学の学位を取得する方法

 

単に舞台を図書館に設定するだけにとどまらず、型破りな図書館員と、彼女の救済に奮闘する司書を通して図書館の様々な側面を披露してくれる映画『パーティーガール』では、若い司書らが、これから司書資格を取得しようと考えているメアリーに最適な図書館情報学のプログラムについて話し合うという、これまた珍しいシーンが含まれています。

 

最短で最小限の費用で最高のプログラムがいいでしょ

 

レファレンスの面白さに目覚めたメアリーは、図書館員になりたいという将来の職業への展望を持ち始めますが、それだけではなく、ジュディに対して自分の意図を証明したいと考えています。

 

ニューヨーク公共図書館分館の館長であるジュディは、自身が払った保釈金をメアリーに返済させるために自分の図書館の補佐役として彼女を採用してはみたものの、司書としてキャリアを築くことなどまるで期待しておらず、メアリーにもそれは通じているからです。

>>ケーススタディ045:司書は修士号を持った専門家です?

 

メアリーが司書資格を取得するためにはどうすればいいか、多様な民族、性別、年齢のメンバーが集って、さまざまな図書館情報学プログラムの長所や短所を話し合ったり、図書館の館種の違いについて自分たちが持つ偏見を明らかにしたり、あーでもないこうでもないと意見を交わす場面は本当に興味深く、素晴らしいシーンです。

 

ハワード: You don’t need some high status degree. You want the best program for the least money in the shortest amount of time.(高いステータスの学位は必要ないから。最短で最小限の費用で最高のプログラムがいいでしょ。)
ワンダ: Absolutely.(絶対そう。)
アン: Oh, please! You went to Columbia. You think you’d be working here if you went to some dinky small town program?(ねぇちょっと、自分はコロンビアに行ったのに。小さな町の学位を取っていたら、ここで働けていると思うの?
ワンダ: I say Michigan. I did my undergraduate there. Ann Arbor is so much fun.(わたしはミシガンを卒業したのよ。アナーバー(ミシガン大学アナーバー校)はすごく楽しいよ。)
メアリー: I don’t want to leave New York.(ニューヨークは離れたくないなぁ。)
ハワード: Well, don’t. You’re going public, right?(だね。公立を目指すでしょう?」

メアリーは、ハワードの発言の意図が分からず混乱した表情を見せ、アンが介入します。

アン: Public libraries. As in non-academic. Howard doesn’t approve of academia. He thinks it’s for wimps.(公共図書館。大学ではなく。ハワードは大学図書館を認めてないのよ。弱虫のための場所だとか言って。)

※「弱虫のための場所」は、字幕翻訳では、「屈折した紳士気取り」となっているが、ニューヨーク公共図書館に勤務する彼らにとって、限定された利用者にサービスを提供する大学図書館は生ぬるい環境と言いたいのだろうと推測する。

ハワード: It is.(そのとおり)

アン: I am sick of your reverse snobbery. Just because a person might want to live in a pleasant, non-urban setting, doesn’t mean they’re selling out.(あんたの上級気取りにはうんざりするわ。都会を離れて快適な環境で暮らすことを願うことが、必ずしも”売り切れている”という意味ではないわよ。)

ワンダ: Ann worked in Ithaca, at Cornell.(アンはコーネル大のイサカで働いていたの。)

アン: How do you feel about the Senate?(Senate(議会図書館)はどう?)

メアリー: I don’t know.(わからない。)

アン: There’s a Washington-based program that my friend runs. I think it would be perfect for you, Mary. It’s a little competitive, but she’s an excellent connection…(私の友達が受講しているワシントン中心のプログラムがあるよ。メアリーにぴったりだと思う。少し競争力があるけど、彼女は素晴らしいコネになるわ。)

 

この映画は、エンドロールで専門家が監修していることがクレジットされているだけあり、この場面での彼らの会話も単なるフィクションではなく、かなり現実に沿って忠実に描かれています。

 

「最適な司書養成プログラム」のためのレファレンス

 

そして、この場面が非常に素晴らしいのは、彼らの会話がまさに司書によるレファレンス・インタビューとして成立していることでです。

メアリーは、図書館情報学の学位プログラムに関するアドバイスを探していてレファレンスが必要な立場であり、彼女の同僚はみな、それぞれが知っている情報で彼女を助けようとしています。

しかし、この参照インタビュー中に実際にメアリーに傾聴しているのはハワードだけであり、メアリーがニューヨークに滞在したいと言ったにもかかわらず、ワンダはミシガンに、アンはワシントンD.C.に言及するなど脱線していますが、メアリーではなく映画の視聴者に対して、アメリカで司書として働く場合の選択肢を披露しているのだと考えると、秀逸なグループレファレンスだといえます。

 

では、『パーティー・ガール』で彼らが提供してくれた図書館情報学のコースの情報をまとめておきます。(2021年最終確認)

 

コロンビア大学

この映画の中で、大学図書館司書への偏見を持ち、ニューヨークに留まったまま最短で最小限の費用で最高のプログラムをお勧めするなど、もっともメアリーの希望に寄り添った情報を提供したアフリカ系のハワードが卒業したのがコロンビア大学。

メルヴィル・デューイが1887年に創設したアメリカで最も古い図書館学校(School of Library Service: SLS)です。

「貴重書学および蔵書保存学コース」は、世界でも評判の高いユニークなプログラムでしたが、一方で、学内では図書館学コースは最も小さい学部であり、研究を主たる目的とする大学に専門学校である図書館学校を残置していることへの批判や財政難、情報学に関心をはらってこなかったカリキュラムの問題、大学の教育プログラムや研究活動から孤立した存在であったことなどから1992年をもって閉校(学位認定は1993年まで)しています。

この映画は1995年の設定であるため、ハワードがそこで学位を取得した可能性は十分あり得ます。

 

ミシガン大学アナーバー校

他のメンバーの意見に同調するなど終始控えめな態度でありながら、なぜかニューヨークに留まりたいメアリーに対してワシントン押しのワンダが卒業したのが、ミシガン大学アナーバー校(通称アナーバー)の図書館情報学プログラムです。US NEWS主要研究課程ランキング(2019)で5位に位置するなど、人気のプログラムです。

 

コーネル大学

大学図書館を見下すハワードに突っかかりつつも、情報が必要なメアリーに対して傾聴力が不足していると思わされるアンは、ワンダによって、イサカのコーネル大で働いていたことが明かされます。

コーネル大には過去から現在にかけて図書館情報学のプログラムがないため、アンはどこかで学位を取得し、ニューヨーク州イサカのコーネル大学で司書として専門的に働いていたと思われます。

 

ワシントンベースのプログラム

アンが最後に触れた「ワシントンのプログラム」は、ワシントンDCのカトリック大学のプログラムである可能性が最も高いです。

 

▼アメリカで司書資格を取得して図書館で働くためには、ALA認定であることも重要です。

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