ケーススタディ011:大学の図書館を一般利用する

 

大学には、高校までにある学校図書室(図書館)とは異なり、「附属図書館」という独立した図書館があります。

「大学附属図書館は大学の心臓部」(ハーバード大学元図書館長)という言葉がありますが、大学生が大学生活を行う上で非常に重要な機関になります。また、大学に所属する教授や研究者も利用するため、蔵書の種類は大学の専門領域に特化した学術書がメインとなります。

 

そのため、利用したい資料が専門的なものであればあるほど、公共図書館になくて大学図書館にあるという状況になりえます。そういった場合、その大学に所属していないと利用できないのでしょうか。

 

1986年のコメディ映画『赤ちゃんはトップレディがお好き』では、ニューヨークのマンハッタンから田舎に移住した元キャリアウーマンの女性が、こともなげに地元の大学図書館を利用している様子が描かれます。

 

 

ハーバード大学で経営修士号を取得し、マンハッタンの一流企業で働く優秀なキャリアウーマン、J・C・ワイアット(ダイアン・キートン)は、生活のすべてを仕事に捧げる順風満帆な日々を送っています。

 

重役の椅子を目の前にしたある日、顔も知らない親戚が亡くなり、思いがけない遺産が舞い込んでくると知り大喜びしますが、しかしその遺産とは、J.Cの予想に反し、生後13カ月の赤ちゃんエリザベスだったのです。

 

エリザベスが家にやってきてからというもの、慣れない育児に振り回され、恋人にも愛想をつかされ、仕事でもミスを連発します。

それでも自分で勝ち取ったクライアントとの契約を交わすために奮闘しますが、部下にチャンスを奪われ会社を辞める決断をすると、同時に都会生活も手放し、田舎に家を買ってエリザベスを連れて移住します。

 

最初は慣れない田舎生活でしたが、庭で採れた大量のりんごを使ってエリザベスの離乳食用にアップルソースを作ったJ.C.は、一部を馴染みの商店に置いてもらうことにします。

するとそれが思いがけず好評となり、本格的に売り出そうと考えます。

 

そこで、ベニントンカレッジ図書館(Bennington College Library)を訪れ、文献を調査します。

 

 

『赤ちゃんはトップレディがお好き』にみる図書館シーン

 

 

自家製のベビーフードが思わぬ好評を博したJ.C(ジェー・シー)は、それをビジネス展開することを思いつきます。

 

そこで彼女がとった最初の行動は何でしょうか?

 

図書館へ行く、です。

さすが元キャリアウーマンと言ってしまっていいのか、元来、賢い人の自然な行動といえるのか、はたまたインターネットが普及していない時代だからこそなのか、ここで真っ先に「図書館」が浮かぶのは、現代では珍しいことかもしれませんね。

 

この場面では、「Bennington College Library」の看板が映った直後にJ.Cが図書館にいる場面に移るので、ベニントンカレッジの図書館だということが明確にされています。

 

『赤ちゃんはトップレディがお好き』の次のショットでは、J.Cが早口でデスクの若い司書(おそらく学生アルバイト?)に必要なすべての情報をまくしたてます。

 

図書館員はただうなずき、メモを作りはじめます。

 

この女性図書館員は、めがねと80年代を象徴するようなデザインのベストを着ています。(映画でよく描かれる古典的な司書のイメージです)

大きなテープディスペンサーと彼女の横には本のカートもあります。(古典的な「司書の小道具」の例です。)

 

この図書館員は、必要なものを適切に手に入れました。

なぜなら、次のショットではJ.Cが大量の資料を机に広げ、メモを取っているからです。

 

J.Cの「I’m doing a little bit of research.(わたしはちょっとした調査をしています)」というセリフがあります。

 

 

『赤ちゃんはトップレディがお好き』にみる図書館のケーススタディ

 

彼女が大学図書館に行った理由はわかりません。

単に一番近い図書館が、公共図書館よりも大学だったのかもしれません。

 

ベニントン大学はバーモント州に実在する大学ですが、映画の舞台としてそのままベニントン大学の図書館が利用されたのかどうかは不明です。

 

一市民が大学図書館を利用できることがわかったところで、果たしてどれだけの図書館サービスが利用できるのでしょうか。

 

 

 

一般的に、日本の大学図書館では、学外の一般利用者に対して資料相談はできますが、その図書館に置いていない資料だった場合、別の図書館から取り寄せたり、複写を依頼するという範囲まではできません。

 

J.Cの場合、この小さな図書館に求める資料が揃っていたことは幸いでした。

 

 

大学図書館は、その大学に所属する人(学生や教員、職員)しか利用できないと考えている人もいるかもしれませんが、実は、多くの大学が一般利用を許可しています。

 

国内だと、国立大学はほぼすべてオープンですし、地域住民に限定して開放している大学図書館もあります。

医大、芸大などの専門図書館の要素が強い大学図書館は限定的な印象です。

 

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