ケーススタディ029:もしも、模範囚が図書館員になったら

 

1995年アカデミー賞7部門にノミネートされた、言わずと知れた名作『ショーシャンクの空に』。

この映画のテーマは、冤罪と脱獄、そして、希望と友情です。

その中で刑務所図書館もまた、かなり重要な存在として登場します。

 

冤罪で終身刑の判決を受けたエリート銀行員のアンディ(ティム・ロビンス)は、劣悪な環境にあるショーシャンク刑務所に服役します。

当然、その環境に馴染むことができず孤立しますが、やがて、同じ受刑者の役割や立場を理解することで調達屋のレッド(モーガン・フリーマン)ら仲間ができ、刑務官からも一目置かれる存在となります。

ノートン所長や刑務官らの税務処理や、資産運用のアドバイスを的確に行うことでさらに評価を得たアンディは、「図書係」の仕事を与えられます。

その頃のショーシャンク刑務所では「図書係」というのは名ばかりで、実際には図書室はその機能を果たしていませんでしたが、アンディは、かつてのビジネスマンの手腕を生かし、図書室を変える決意をします。

 

 

映画『ショーシャンクの空に』の図書館シーン

 

終始、刑務所が舞台である『ショーシャンクの空に』に登場するのはもちろん刑務所内の図書室です。

 

模範囚から図書係に任命されたアンディが最初に試みたことは、本の購入予算の増額を州政府に求めることです。

週に1回政府に手紙を送り続けること6年後、ようやく本の購入予算が200ドルに増額され、図書費の大幅増額に加え、中古図書も寄贈されることになります。

しかし、それでも満足しないアンディは、さらに週2回政府に手紙を送り続け、粘りに屈した州から500ドルの予算を計上します。

アンディは予算をフル活用し、格安の本や売れ残りの本をたくさん買い集め、ほかの受刑者もアンディを手伝い、本の分類や書架整備、図書室のリノベーションにやりがいを見出すようになります。

生まれ変わった図書室は、いつも本を読む受刑者で溢れ、彼らは読書によって「自由」を知ることになります。

 

一方、50年という長い年月を刑務所で過ごしたブルックス(ジェームズ・ホイットモア)は、この図書室では一番の古株でベテラン。教養があり、刑務所内で大切な存在としてみんなに慕われています。
しかし、その世界に適応しすぎたがための、あまりに皮肉で悲しすぎる悲劇が待ち受けています。

 

入所から20年近くが経ち、アンディが図書室を使って囚人に高卒認定資格を取得させるようになったころ、家宅侵入罪の刑で、トミー(ギル・ベロウズ)が入所してきます。

妻と生まれたばかりの赤ちゃんがいるトミーは、子どものことを思い、2年の受刑期間の間に高卒資格を取りたいとアンディを訪ねて図書室にやってきます。

アルファベットの読み書きも出来なかったトミーでしたが、、勉強の面白さを知り、あっという間に高校レベルまで進むと、アンディ自身もトミーの教育が新たなやりがいとなっていきます。

1年後、トミーが高校卒業認定試験を受けた日、レッドからアンディの過去を知らされたトミーは、その事件の真犯人に心当たりがあることを話します。

トミーは高卒認定試験に合格していましたが、アンディを出所させたくない身勝手なノートンの思惑によって射殺されてしまいます。

 

映画『ショーシャンクの空に』にみる図書館のケーススタディ

映画のクライマックスで、アンディは脱獄に成功しますが、それを決意させた要因には、トミーの殺害だけではなく、身勝手で冷酷なノートンの「言うことを聞かなければ図書室をつぶす。すべての本を広場で焼いてやる。そして、その火の回りで踊ってやる。」の発言が含まれているのは間違いないと思われます。

それは、アンディにとっても、ほかの囚人にとっても「自由」を奪われることです。

『ショーシャンクの空に』のもうひとつの隠れたテーマ、最後まで見ないとわからないのが「自由」です。

脱獄を目指す時点でアンディが「自由」を求めていることが分かりますが、たとえ罪を犯しても自由を感じれば人は変化するということを、冤罪で刑務所に収監されたアンディが図書室にこだわり続けることで他の囚人たちに伝えたかったのではないかなと思います。

 

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