図書館の本に”絶対に”やってはいけないこと

映画『サスペリアPART2』には、ある事件を追っているピアニストが、図書館で参考になる本の該当ページを破る場面が描かれます。

 

 

ピアニストのマーカス・デイリー(デヴィッド・ヘミングス)は、ある日、自宅の窓越しに惨殺な殺人事件を目撃し、事件が起きた部屋に妙な違和感を覚えたことで真相を探り始めます。

 

図書館に行き、ある本の中に真相究明に役立つ情報を見つけると、その本を借りるわけでも本を丸ごと持ち出すわけでもなく、必要な箇所だけを破り持ち去ります。

 

図書館の本を破るという行為の善悪は言語道断ですが、では、本の中にある膨大な情報の中から、一部だけ必要な部分を取り出したい場合、しおりを挟んできちんと貸出手続きを行うか、必要な箇所を複写するのが図書館の本でできる最大限のことです。

 

では、『サスペリアPART2』の図書館の本を破る行為以外に、図書館に本に対してやるべきではない行為が描かれた映画はあるでしょうか。

 

図書館の本を持ち去る

 

映画『リトル・ダンサー』には、少年がブックモービル(移動図書館)で本を貸出手続きをせずに持ち去る場面が描かれます。

 

 

将来の職業選択がないような炭鉱の街に暮らす少年ビリー(ジェイミー・ベル)は、あるきっかけから音楽に合わせて優雅に踊るバレエに魅了されます。

そして、いつもそのことで頭がいっぱいになったビリーは、自宅でも練習したいと考え、近所のブック・モービル(移動図書館)に行き、バレエの基礎を学ぶための本を手にします。

しかし、愛想のない図書館員(キャロル・マッキーガン)に「それはダメ。小学生は借りられないの」と告げられると、図書館員が目を離した隙に服に隠して持ち出してしまいます。

 

図書館の本を無断で持ち出すのはあってはならない行為ですが、情報を求める利用者に対して適切に貸出手続きの仕方を教えてあげられなかったこの図書館員にも非がある場面です。

 

付箋を貼るのも”絶対に”やってはならない(2018年追記)

 

図書館の本に”絶対に”やってはいけないことが映画に描かれることはあまりありませんが、ほかにもマーカーで線を引くなどの書き込みをしたり、著作権の範囲を超えた複写をしたり…ということがあります。

そして、問題なさそうに思えますが、付箋を貼るのも”絶対に”やってはならない行為だということが、あることで明るみになりました。

 

2018年6月21日、神奈川県立図書館の公式アカウントが、こんな言葉と共に投稿した「恐怖写真」が、ネット上で話題になったのです。

 

 

添付されている画像には、緑色の付箋が写っており、付箋をはがそうとした際に印刷されていた文字が一緒にはがれてしまった状態が見てわかります。

 

県立図書館の担当者が公式ツイッターにこれを投稿したところ、28日時点で約2万5000件リツイート(拡散)されています。

 

「図書館恐怖の写真(心霊番組風)画像をご覧いただきたい。」

 

からはじまる、心霊写真に例えたユーモアのある注意喚起は、悪気があってやったことではないであろう利用者への配慮が伺えます。

 

そして、みごとに予測以上の注意喚起になったことでしょう。

 

なぜ、図書館の本に付箋を貼ってはならないのでしょうか?

 

そもそも付箋というものは、簡単に剥がれることが特徴でありメリットでもあり、本やノートに書かれた莫大な情報の中から、必要な箇所をわかりやすくするために使う便利なものですよね。

それを貼ってはいけないと言われたら、図書館の本を使って勉強している人には困る話かもしれません。

 

しかし、このツイッターを投稿した職員も「絶対に」と書いています。

 

紙は、年月が経つにつれ劣化し、もろくなるため、いくら付箋のように強力ではない糊が使用されているものでも、ページの表面が剥がれてしまうことがあります。

 

また、ものすごく昔に発行された本などは、そもそも紙の素材が、現代に作られた付箋の糊と素材が合わないという理由で破れてしまう可能性もあります。

 

実際に、例の件で話題となった本は1977年に出版された県の歴史について書かれた本だったそうです。

 

この本が、年月の流れによる劣化によってそうなったのか、もともと付箋に合わない素材の紙だったのかはわかりませんが、実際にそういうことが起こってしまったというよい例です。

 

また、たとえ最近の本だとしても、綺麗に付箋が剥がれたように見えても、わずかに残った付箋の糊によって何十年後かに変色してしまう可能性があります。

 

このように、付箋で本が破損するかどうかは見た目では判断できないため、図書館の本には付箋ではなく紙のしおりを挟むのがよいでしょう。

 

今回、図書館からのツイートにこれだけ反響があったのは、「本に付箋を貼ってはいけない」と思っていない人が多かったからだと考えられます。

中には、「活字が剥がれるなんて知らなかった」という声もありました。

 

そして、もうひとつわかったことは、図書館には本の修理のプロがいるということです。

 

今回のツイートをされたのも、県立図書館で本の修理を担当する職員だといいます。

 

本の誤った修理についてよくあるのは、

  • 本に書き込みを発見し、消しゴムで消す
  • 本が破れたり、ページが取れてしまい、自分でテープでの補修をする

などが考えられます。

 

しかし、消しゴムで消す場合も、やはり古い本だとページを傷めてしまうこともあり、そうすると修復できなくなる可能性もあります。

 

また、一般的なセロテープなどは時間が経つとテープが劣化したり、変色したりします。

 

そしてその結果、本を傷めてしまうことに繋がります。

 

図書館には、本の修復を担当する職員がいるので、返却の際に、「書き込みがあった」「誤ってやぶってしまった」ということを正直に伝え、そのまま返却するのが正解です。

 

ただし、あまりに酷い破損は、弁済になります。

 

絶対に、図書館の本に付箋を貼ってはならない--。

神奈川県立図書館の司書さんのこの言葉は、決して

「図書館の本だから、あなたの本ではないのだからやめてね。」

という意味ではなく、

「図書館の本が持つ特質が、付箋と相性が良くない」

ということを教えてくれるものでした。

 

図書館にある本は、長く保存し、何年にもわたって読み継いでもらうための資産です。

誰もが使える図書館の本だからこそ、マナーを守り、次の利用者がいい気持ちで利用できるように配慮していきたいですね。

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