ケーススタディ015:司書・図書館員に副業は必須?

 

図書館が舞台のひとつとして描かれた映画『耳をすませば』では、主人公・雫(しずく)のお父さんが図書館で働いているシーンも登場します。

 

 

 

お父さんは、市立(県立?)図書館で働く司書です。

※作中で雫は「市立図書館」と呼称しているのですが、貸出カードには「県立」の記述が在ります。

これは原作では某県と設定されており、貸出カードを見るシーンが「県立」と記載されているのを、映画の設定に合わせて「都立」または「市立」に修正せずにそのまま流用した演出ミスによるものだと考えられます。

 

しかし、雫のお父さんは、原作によると、本業は郷土史家なのだそうです。

 

映画『耳をすませば』にみる図書館のケーススタディ

 

公共図書館で働いている司書は、全員がその自治体の公務員だと思われがちですが、図書館で働く人の多くが臨時職員、パートなどのいわゆる非正規司書です。

 

非正規司書は最低賃金に迫るほど給料が低く、それだけで生活していくのが厳しいという問題があります。

 

では、雫のお父さんは非正規司書であり、郷土史家とのWワークをしているのでしょうか。

 

郷土史家とは、ある地方の歴史を調査・研究し、それを本にしたり、講演などで後世に伝える人のことをいいます。

市町村史編纂の時に動員されたり、市町村の文化財保護委員などになって文化財に対する諮問をしたりもします。

研究者として郷土研究所、民族資料館、文化財保護関連などに務める専門家もいますが、そのような職業につけるのはほんの一部の人だけで、「地名辞典」や「教育委員会資料」、「郷土史」などを執筆している郷土史家の9割は、小学校教諭、中学高校の歴史の教員、退職した元教員なのだそうです。

教師の仕事の合間に古文書をみたり、近隣の遺跡で土器を拾ったり、城跡や石碑や地名の由来などを調べたりしているそうです。

 

また、歴史や文化財とは関係ない職業を持った歴史愛好家で「郷土史家」を自称する人もいて、郷土史家とは一般的に職業ではなく、肩書や自称に近いものだと考えられています。

 

県や市の博物館学芸員や文化財担当職員、大学に属する教授など、実際に「郷土史」を職業としている人もいますが、そういった人は郷土史家とは言わずに仕事上の「学芸員」や「大学教授」などの肩書を使うそうです。

 

ですから、雫の父も、普段は市立図書館の司書(職員)であり、その延長で「郷土史」の研究を続けているのかもしれませんね。

どちらが本業でどちらかが副業とかではなかく、どちらも本業という働き方もありますね。

 

映画でそれらがはっきりとわかる描写はありませんが、自宅で、たくさんの資料の中で机に向かているお父さんの姿は映ります。

 

 

天沢聖司との出会いをきっかけに、雫は、高校受験を控えた大事な時期に小説を書くことに夢中になり、一気に成績が下がりはじめます。

お母さんやお姉さんが心配を募らせる中、お父さんだけは、雫の夢を理解し「やってみなさい」と応援します。

これは、本や文章を書くことが大好きな雫が、司書と郷土史家である自分と重なる部分を感じたのかもしれませんね。

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