ケーススタディ025:ジャーナリストの調査業務の一端を担う

 

「図書館」には、誰もが自由に入れる公共図書館、所属する研究者や大学生が利用できる大学の附属図書館のほか、各種専門に特化した専門図書館などがあります。

 

映画『スポットライト 世紀のスクープ』には、日刊新聞社「ボストン・グローブ」の社内図書室が登場しますが、このような社内(企業)にある図書館も専門図書館に含まれます。

 

 

この映画の図書館場面では、図書館(司書)が記者の調査の一部を担うという、新聞社ならではの役割が描かれています。

 

 

映画『スポットライト 世紀のスクープ』にみる図書館シーン

 

ボストンの日刊紙「ボストン・グローブ」が新局長としてマーティ・バロン( リーヴ・シュレイバー)を迎えると、さっそくバロンは同紙の少数精鋭取材チーム「スポットライト」のウォルター・ロビンソン(マイケル・キートン)に、ゲーガン神父の子どもへの性的虐待事件をチームで調査し記事にするよう提案します。

 

 

メンバーが次々に取材に出る中、チームの記者のひとり、マット(ブライアン・ダーシー・ジェームズ)は、即図書室に向かい、必要な資料を揃えるよう司書に依頼します。

 

スポットライトチームの記者マットと司書長のリサ©2015 SPOTLIGHT FILM, LLC

 

 

この映画の中で、司書と直接やり取りをするのは終始マットだけです。

 

 

マットは、螺旋階段を降りて地下の図書室に向かいます。

 

マット:Hey Lisa. Could you pull all the relevant clips on that for me? (こんにちは、リサ。これに関連する過去記事のコピーをまとめて私のところまで持って来てくれないか。)

リサ(司書):Yeah. [メモをみて] Is this for Spotlight?(スポットライト用?)

マット:Just drop them off when they’re ready? Thanks.(全部用意出来たら下におろすだけ。ありがとう。)

 

※日本語字幕では、リサのセリフは「これ全部?」、その後のマットのセリフは「出来たら下まで送って」になっていますが、直訳すると、上記のように少しぶっきらぼうな会話になっています。

これには理由があって、「スポットライト」チームは、社内でも極秘で調査をすすめるチームなのです。
このことは、図書館が関連する場面においても重要な要素となるため、正確な字幕にしてほしかったところです。

>>ケーススタディ027:司書は、余計なことを詮索しない

 

 

場面は少し飛んで・・・

 

 

司書が総出で、マイクロフィルムやファイル、インターネットから過去記事や写真など必要な情報をピックアップしています。

 

 

新聞の切り抜きフォルダは新聞社の図書館ならではのコレクション©2015 SPOTLIGHT FILM, LLC

 

 

マイクロフィルムのコレクション©2015 SPOTLIGHT FILM, LLC

 

>>ケーススタディ021:マイクロ資料とマイクロリーダー

 

写真のコレクションもまた、新聞社ならでは©2015 SPOTLIGHT FILM, LLC

 

 

それらをまとめてカートに乗せ、マットのいるスポットライトチームの部屋に運びます。

 

社内でも極秘で取材をする「スポットライト」チームの部屋は地下にあります©2015 SPOTLIGHT FILM, LLC

 

 

司書は、集めた情報のファイルをマットに渡します。

 

司書:記録室の資料よ。(字幕では「記録室」となっているが、やはり原語は「ライブラリー」と言っている。)

マット:そこに置いて

司書:教会を記事にするの?

マット:いや教会は記事にしない

 

映画『スポットライト 世紀のスクープ』にみる図書館のケーススタディ

 

新聞社の社内図書室の役割を完全に理解しているわけではありませんが、会社というものが”同じ目的を持ったひとつのチーム”なのだと考えると、この場面では、ボストン・グローブという会社はそれが健全に機能していることがわかる素晴らしい役割分担が描かれた場面だと思います。

 

 

 

最後に司書が記者に詮索するのは珍しいと思いましたが、全体的に図書館業務の中の、表からは見えない部分が短時間に描かれていて見ごたえがあります。

 

>>ケーススタディ027:司書は、余計なことを詮索しない

 

ボストン・グローブ社と同じように、新聞社には、どこでもその社が所有する企業図書館があるはずです。

場所によって「記録室」と呼ばれたり「資料室」と呼ばれたり、日本語では様々な呼び方ができますが、英語ではそういった場所は一貫して「ライブラリー(library)」といいます。

発行された自社のすべての新聞が保管され、記者が調査するために必要だと思われる資料を揃えている場所なので、それらの館種は「専門図書館」になります。

 

おもな利用者は記者(ジャーナリスト)ですが、あることについて記事を書くときに必要となる資料を自分で探すのは大変な業務ですが、そんなとき、調査業務の一部を担う図書館の役割がとてもよく描かれている場面です。

 

>>ケーススタディ026:続・ジャーナリストの調査業務の一端を担う

 

映画『スポットライト 世紀のスクープ』にみる図書館用語

専門図書館(special library)

 

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  1. 2020年 10月 19日
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