映画『ティファニーで朝食を』では、駆け出しの作家・ポール(ジョージ・ペパード)が、ホリー(オードリー・ヘップバーン)をニューヨーク公共図書館に連れて行き、目録カードで自分の本を紹介する場面が描かれます。
貸出方法はニューアーク式かブラウン式かはわかりませんが、いずれにしてもデジタル化される以前の、目録カードで本の蔵書を管理していた時代の貴重な図書館映像です。
舞台は、現在のニューヨーク公共図書館の3階にある美術と建築の書物を集めた閲覧室だと思われますが、映画用のセットのようにもみえます。
正確には不明です。
映画『ティファニーで朝食を』にみる図書館のケーススタディ
直前の場面、ポールとホリーが目録をもって「File call slipt here」というカウンターにいるアフリカ系の男性司書にもっていきます。
ここでは特に会話もアクションもありませんが、この後、この司書によって何が行われているのか?ということはこちらで描いています。
ベルが鳴りポールの出納番号「57」の掲示が光ります。
ポール:Number fifty-seven. That’s us.(57番。ぼくらだ。)
ホリー:[大きな声で]Fifty Seven, please! “Nine lives” by Varjak-Paul!(57番お願いします! ポール・バージャックの「9つの命」!」
司書:Shh!( シー)
ホリー:Did you ever read it? It’s absolutely marvelous!(読んだことある?絶対に面白いわよ!)
司書:No, I’m afraid I haven’t.(いいえ、恐れ入りますが、まだです。)
ホリー:Well, you should … He wrote it! He’s Varjak-Paul, in person!(あら、読まなきゃ。彼が書いたのよ!彼が、ポール・バージャック、著者なのよ!)
ホリー:[ポールに向かって]She doesn’t believe me. Show her your driver’s license, or diner’s club card, or something … (彼女、信用しないわ。免許証かクレジットカードを見せてあげて。)
ホリー:[司書に向かって]Honestly, he really is the author! Cross my heart and kiss my elbow!(本当に彼が著者なのよ。誓うわ。)
司書: Would you kindly lower your voice, Miss?(どうかお静かにしていただけませんか?)
ホリー:[ポールに向かって]Why don’t you autograph it? (サインしてみれば?)
ホリー:[司書に向かって]Don’t you think it would be nice? Sort of make it more personal?(いいと思わない?親しみが増すわ。)
司書:Really, Miss …(本当に、あの…)
ホリー:Go ahead, don’t be so stuck up. Autograph it to her!(遠慮することないわ。書いて。)
本当にサインをするポール
ポール:Alright, what shall I say?(なんと書くね。)
ホリー:Oh, something sentimental, I’d think …
司書: What are you doing? Stop that!
ポール :Shh!(シー)
司書:You’re defacing public property!(やめてください。公共の財産ですよ。)
ホリー:Well alright, if that’s the way you feel … Come on, let’s get out of here. I don’t think this place is half as nice as Tiffany’s!(いじわるなのね。行きましょ。ティファニーを見習うべきよ。)
ポールはカウンターに本を置き、ふたりは出口に向かいます。
最後のホリーのセリフは、字幕では「ティファニーを見習うべきよ。」となっていますが、直訳すると「ティファニーの半分ほども素敵ではない。」と言っています。
この図書館に来る直前、ふたりはホリーのお気に入りの場所ティファニーを訪れており、そこで臨機応変な手厚い接客を受けています。
そのため、この司書の融通の効かない生真面目な態度にこのようなセリフが出てきたのだと考えられます。
それよりも前、ホリーがポールに自著へのサインを勧める場面でのホリーのセリフ「Don’t you think it would be nice? Sort of make it more personal?」は、「いいと思いません?個人的なものにすればいいのでは?」ですが、個人的なものというのは図書館の固有資産という意味でしょうか。それとも司書に対して自分のものにしちゃえば?ということ・・・?
いずれにしても、終始、公共のサービスを理解していないホリーのマナーの悪さが際立つ場面です。
ふたりは意地悪な笑みをうかべて図書館を去って行きます。
しかし、ホリーはこのあと、自分のために、この図書館に戻って来ます!
※文中のセリフは映画『ティファニーで朝食を』(© PARAMOUNT PICTURES CORP.2019)より引用
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