ケーススタディ045:司書は修士号を持った専門家です?

 

通常、映画に図書館が登場するとき、「司書」や「図書館員」という用語をわざわざ声を大にして言うことはありません。

 

眼鏡をかけた人物をカウンターや机の後ろに立たせたり座たせたり、本を書架に置いたりカートを押したりする動作を与えるだけで図書館員というキャラクターを確立できるからです。

 

そんな中、ひと言に「図書館員」といっても、職員とアルバイトの立場を明確に描いたのが、『パーティーガール』です。

 

司書っていうのは、図書館学の修士を持った専門職なのよ。

 

主人公のメアリー(パーカー・ポージー)は、働かないで遊んで暮らす楽しい日々だけを望む、まさにパーティーガール。

 

薬物所持で捕まったときに保釈金を支払ってくれた名付け親のジュディ(サーシャ・フォン・シャーラー)が司書で、メアリーは彼女の救済によって、自身も図書館で働くことになります。

 

 

しかし、ニューヨーク公共図書館分館の館長であり、責任ある立場のジュディは、基本的な労働意欲のないメアリーに、その職を甘いものだと考えてほしくないようです。

 

この場面での、立場が対極にある二人の会話は本当に面白いです。

 

 

ジュディ: I lost two dedicated clerks last month because I couldn’t afford to pay them a competitive wage. They make more money at McDonald’s. You… no, a girl like you couldn’t…(先月わたしは、競争力のある賃金を支払うことが出来ないという理由で2人の臨時職員を失ったの。彼らはマクドナルドでもっといい給料を稼ぐでしょうね。…あなたのような子には…(勤まらない))」

 

メアリー: What do you mean, a girl like me? … You think I couldn’t be a librarian?(”わたしのような”ってどういう意味?!わたしに司書にはなれっこないと考えているわけ?)

 

ジュディ: Darling, a librarian is a professional with a master’s degree in library science. Even a clerk, who merely shelves and stamps(あのねぇ、司書っていうのは、図書館学の修士を持った専門職なのよ。たとえ貸出・返却を行うだけのカウンター業務でもね。)

メアリー: You think I couldn’t be a library clerk? …(あなたは、わたしが図書館カウンターさえ勤まらないと思っているわけね。)

 

ジュディ: A library clerk is smart, responsible (図書館カウンターは賢くて責任があって…)

 

ジュディ: You don’t think I’m smart enough to work in your fucking library?(あなたはわたしがただの図書館(fucking library)で働くほど賢くないと思っているわけね。)

 

ジュディ: I think nothing of the sort. … Fine, you can start right now!(そこまでは言ってないけど…いいわ、いまから働いてちょうだい。)

 

ジュディ: Fine! I will. Great.(よし、やるわよ!」

 

その後、メアリーの指導を頼まれたアフリカ系の女性司書が、皮肉たっぷりに「デューイ十進分類法を知ってるの?」というセリフが続きます。

 

司書は図書館学の修士を持った専門職なのか

 

※現在では、図書館学(library science)という学位の名称は、図書館情報学(library & Information science)に変更しています。

 

この映画は、監修に専門家が入っているだけあり図書館の場面はかなり忠実に描かれていて、司書の専門性を表すジュディのセリフも現実と相違ありません。

アメリカで司書資格を取得し、図書館に勤務しようと思ったら、ALA(アメリカ図書館協会)認定の大学院で修士を取得する必要があります。

 

しかし、日本のそれはアメリカとは異なります。

日本では図書館員の重要性があまり認識されておらず、その養成は短期大学や学部レベルでの図書館学(現在では、図書館情報学) いわゆる司書課程での24単位履修が主流となっています。

 

すなわち、 学部レベルの養成と言っても、専攻や学科ではなく課程での養成です。

 

そのため、毎年1万人前後の大学生(短期大学生も含む)が司書の資格を取得し、その中の 200 人前後の卒業生が実際に図書館に就職するといわれています。

 

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